ストーリーとしての競争戦略

戦略がストーリーになっているか?
面白い視点です。
ストーリーが面白ければ、実行部隊に「伝える」ことができると筆者は言います。

ストーリーを組み立てるときに柱となるのは以下の5つです。

①競争優位(Competitive Advantage)
ストーリーの「結」・・・利益創出の最終的な論理
②コンセプト(Concept)
ストーリーの「起」・・・本質的な顧客価値の定義
③構成要素(Components)
ストーリーの「承」・・・競合他社との違い
SP(戦略ポジショニング)もしくはOC(組織能力)
④クリティカル・コア(Critical Core)
ストーリーの「転」・・・独自性と一貫性の源泉となる中核的な構成要素
⑤一貫性(Consistency)
ストーリーの評価基準・・・構成要素をつなぐ因果論理

戦略においてストーリーが描かれているのか、という点に関して、成功した企業におけるストーリーを
分析しており、読んでいて非常に楽しいです。
やれ、マブチモーターしかり、セブンイレブンサウスウエスト航空スターバックスなど、名だたる企業達です。

個人的に一番興味深かったのは④のクリティカル・コアです。
すぐれたストーリーには一見して非合理なクリティカル・コアがあるという点です。
スターバックスの直営方式、デルの自社工場、ガリバーの買い取り専門などです。
それら模倣を難しくし、すぐれた戦略が結果として、好業績につながっているという話には納得感がありました。


しかし、スターバックスにしても、デルにしても好業績に陰りが見えた時があります。
その際、いずれの企業も会長に退いていた創業者がCEOに戻りました。
これは当初のストーリーから外れたからという話でしょうか。
僕は違うと思います。
デルに至っては直販だけでなく、再度小売への進出も始めています。
この本には企業の成長ステージという視点が抜けていると思います。
成長時・成熟時でストーリーは同じになるのでしょうか?
ストーリーを変えるときは何を意識すればよいのでしょうか?
IBMのようにコンセプトの変更も余儀無くされ、成功している企業もあるはずです。
また、すべての成功している企業にストーリーがあるのか?
失敗している企業にはストーリーはないのか?
最後の方に出てくるガリバーインターナショナルの例は非常に微妙なサンプルだと思います。
なぜなら、オークションという社会インフラの整備がストーリーに欠かせなかったという結論だからです。


いずれにしろ、読み物としては非常に面白かったですし、学ぶところも多かったです。